思い出の花
2008年8月25日前回の失敗から幾月が経ったのか
現在は南米東岸はリオデジャネイロの街に訪れている
1502年1月 探検家、ガスパール・デ・レモスにより発見されたかの街は自分の生れ育った土地と比べかなり気温が高く乾燥していた
街の人々も気候柄とでも言うのか、陽気な人柄が多く
部外者である自分達に対して寛容で非常に過ごし易い滞在となった
その街で「とある花」の調査依頼をされる事になった
依頼主は酒場で働く娘「ジセル」
早速、依頼人に話を聞いてみようと 酒場へ足を運んだ
「いらっしゃいませ。今日も暑いですねぇ。何を飲みますか?」
酒場に訪れると若い女性が1人 笑顔でこちらに声をかけてきた
「すいません。花の調査の依頼を頂いたのですが・・・ジセルさん?」
「・・・あ!赤い花を探してくれるんですね!ありがとうございます!」
彼女がジセルか。笑顔の似合う元気な女性だと素直に思った
早速調査に移る
「その花について、詳しく聞かせてほしいのですが」
「えっと、赤い花というのは私とおばあちゃんの思い出の花で、どうしてもおばあちゃんにプレゼントしたくて・・・」
そう話しながら笑顔から少しずつ彼女は顔を曇らせていく
「最近、おばあちゃんの元気がなくなってきてて・・・私、小さいときは泣き虫で、私が泣くたびにおばあちゃんが赤い花を摘んできてくれたんですよ。それがすごく嬉しくて、元気が出たんです・・・」
そう彼女は話すと少し言葉を濁らせた
すると、邑雲が小さな声で
「なぁ、船長・・・」
そう呟いた
「ジセルさん、あなたは何故、花の調査を私達に依頼されたのですか?あなたが話さなくてはいけないことを話してください」
「ばっか・・・!」
邑雲が小声で罵倒してくる
ジセルは言葉を詰まらせながらも
「だから、今度は私がおばあちゃんを元気にする番なんです。びっくりさせるために、花のことはおばあちゃんにはナイショなんですよ。でも、私はその花が咲いてる場所を知らなくって、航海者さんたちにお願いすることにしたんです」
場所は分からず・・・報酬も危険と比べればそこまで良くは無いが・・・
「分かりました。少し調査を進めてみます」
すると彼女は再び笑顔になり
「航海者さん、お願いします!」
と深くお辞儀をした
無事依頼主から情報を貰い、酒場を後にしようとした時
「航海者さん、ちょっと待ってくれ」
急に男の声に呼び止められる。酒場のマスターだった
マスターは無言で「こっちに来い」と手を振ってくる
マスターの元に寄り耳を傾ける
「ジセルに聞こえないよう、小声で話すぞ」
(おっさん。ここまで来て大声はないだろ)
「その赤い花なんだが、おばあさんはバイーアの船乗りから受け取っていたんだ。ジセルがあまりによく泣くんで、いくつあっても足りないと言ってたな」
バイーアの船乗り・・・か
マスターは立て続けに
「でも、花を見るときの二人は、いつも笑顔だったよ」
「ジセルさんにとっては、おばあさんとの大事な「思い出の花」なんですね」
「あぁ、そうだ。ジセルが話したとおり、彼女のおばあさんはもう歩くこともあまり出来ない。だからジセルは出せるだけの金を出してでも花の依頼をしたんだろう」
酒場を出て船に向かう
「船長。結局どうするんだ?」
邑雲はこちらを責めるように聞いてくる
「どうしようかね・・・バイーアで情報を得ても先は真っ暗だ」
「あーぁ、俺船降りてここで暮らそうかなぁ・・・楽しいし」
すると楓伐が大声を張り上げる
「何を馬鹿な事を!ここは危険な海域でもあります。一時の感情に身を任せては碌な目に会いませんよ!」
「うるせぇ!お前も話聞いてただろ!ここまできて「出来ません」じゃ格好がつかねぇよ!なぁ、船長もそう思うだろ?!」
そうだな・・・
「総員、出航の準備を。バイーアに向かう」
それを聞いて楓伐は呆れ顔を示す
「船長・・・あなたも随分と見返らない人ですね」
「まぁ、危険なのは今に始まったことじゃない。それに邑雲じゃないが、あそこまで話を聞いて何も出来ないじゃあ航海者としての名折れさ」
邑雲は俄然張り切った様子で
「おっしゃ!みんな!さっさと支度するぞ!」
船員達に手際よく役目を与え、自分も船体の様子を見ようと船に向かっていた
楓伐がそれを見て言葉を漏らす
「私は邑雲の事がよく分かりません。優秀ではあるにしろ感情に流されやすく無鉄砲だ。すぐに命を落とすのでは・・・と」
分からない・・・か
船長という立場からすれば
信頼する者のその言葉は重かった
煙草に火を点け一服をおく
「そうだな。そうかもしれない。でも、楓伐。お前は知らない話になるけど、昔ある海賊に襲われた事があってね。無論、敵の戦力がこちらを上回っていたが・・・
その時、邑雲は皆に指示を出し励まし続け、前に出て戦っていたよ。その甲斐もあったのか、その海賊を打ち倒すことも出来た。私はその事、あいつが自分の船に乗っている事を誇りに思う。自分の船には勿体無い。優れ、強く、そして熱い心を持った船乗りだと」
「もちろん楓伐。お前だってそうさ。いつも冷静で、船をしっかりと守ってくれている。琥鉄も含め、私は素晴らしい副官に恵まれて幸せだと思う」
楓伐は静かにゆっくりと息を吐き
「船長がそこまで仰るならそうなのでしょう。ですが、私は彼を私なりに見極めますよ」
そう言い放つと楓伐も船に向かって歩きだした
性格が合わないのは重々承知だが
「どうも、船長というのも大変だな・・・」
そう口から漏らし 船に向かった
その後、バイーアの船乗りから予想以上に細かな情報を得る事ができ
南米北東岸の上陸地点にて「思い出の花」アマリリスを発見することができた
彼女と彼女の祖母がこの花を手に取り
この花に勝らんとする明るい笑顔を見ることができるのなら
この航海の危険などとるに容易いものだろうと思う
邑雲「全部とって帰ろうぜ!その方がジセルちゃんも喜ぶって!」
楓伐「駄目ですよ!そんな事をしては生態に影響が出るかもしれません!」
「ふう・・・」
摘み取る花の数ほど気苦労は増えるばかりか・・・・
現在は南米東岸はリオデジャネイロの街に訪れている
1502年1月 探検家、ガスパール・デ・レモスにより発見されたかの街は自分の生れ育った土地と比べかなり気温が高く乾燥していた
街の人々も気候柄とでも言うのか、陽気な人柄が多く
部外者である自分達に対して寛容で非常に過ごし易い滞在となった
その街で「とある花」の調査依頼をされる事になった
依頼主は酒場で働く娘「ジセル」
早速、依頼人に話を聞いてみようと 酒場へ足を運んだ
「いらっしゃいませ。今日も暑いですねぇ。何を飲みますか?」
酒場に訪れると若い女性が1人 笑顔でこちらに声をかけてきた
「すいません。花の調査の依頼を頂いたのですが・・・ジセルさん?」
「・・・あ!赤い花を探してくれるんですね!ありがとうございます!」
彼女がジセルか。笑顔の似合う元気な女性だと素直に思った
早速調査に移る
「その花について、詳しく聞かせてほしいのですが」
「えっと、赤い花というのは私とおばあちゃんの思い出の花で、どうしてもおばあちゃんにプレゼントしたくて・・・」
そう話しながら笑顔から少しずつ彼女は顔を曇らせていく
「最近、おばあちゃんの元気がなくなってきてて・・・私、小さいときは泣き虫で、私が泣くたびにおばあちゃんが赤い花を摘んできてくれたんですよ。それがすごく嬉しくて、元気が出たんです・・・」
そう彼女は話すと少し言葉を濁らせた
すると、邑雲が小さな声で
「なぁ、船長・・・」
そう呟いた
「ジセルさん、あなたは何故、花の調査を私達に依頼されたのですか?あなたが話さなくてはいけないことを話してください」
「ばっか・・・!」
邑雲が小声で罵倒してくる
ジセルは言葉を詰まらせながらも
「だから、今度は私がおばあちゃんを元気にする番なんです。びっくりさせるために、花のことはおばあちゃんにはナイショなんですよ。でも、私はその花が咲いてる場所を知らなくって、航海者さんたちにお願いすることにしたんです」
場所は分からず・・・報酬も危険と比べればそこまで良くは無いが・・・
「分かりました。少し調査を進めてみます」
すると彼女は再び笑顔になり
「航海者さん、お願いします!」
と深くお辞儀をした
無事依頼主から情報を貰い、酒場を後にしようとした時
「航海者さん、ちょっと待ってくれ」
急に男の声に呼び止められる。酒場のマスターだった
マスターは無言で「こっちに来い」と手を振ってくる
マスターの元に寄り耳を傾ける
「ジセルに聞こえないよう、小声で話すぞ」
(おっさん。ここまで来て大声はないだろ)
「その赤い花なんだが、おばあさんはバイーアの船乗りから受け取っていたんだ。ジセルがあまりによく泣くんで、いくつあっても足りないと言ってたな」
バイーアの船乗り・・・か
マスターは立て続けに
「でも、花を見るときの二人は、いつも笑顔だったよ」
「ジセルさんにとっては、おばあさんとの大事な「思い出の花」なんですね」
「あぁ、そうだ。ジセルが話したとおり、彼女のおばあさんはもう歩くこともあまり出来ない。だからジセルは出せるだけの金を出してでも花の依頼をしたんだろう」
酒場を出て船に向かう
「船長。結局どうするんだ?」
邑雲はこちらを責めるように聞いてくる
「どうしようかね・・・バイーアで情報を得ても先は真っ暗だ」
「あーぁ、俺船降りてここで暮らそうかなぁ・・・楽しいし」
すると楓伐が大声を張り上げる
「何を馬鹿な事を!ここは危険な海域でもあります。一時の感情に身を任せては碌な目に会いませんよ!」
「うるせぇ!お前も話聞いてただろ!ここまできて「出来ません」じゃ格好がつかねぇよ!なぁ、船長もそう思うだろ?!」
そうだな・・・
「総員、出航の準備を。バイーアに向かう」
それを聞いて楓伐は呆れ顔を示す
「船長・・・あなたも随分と見返らない人ですね」
「まぁ、危険なのは今に始まったことじゃない。それに邑雲じゃないが、あそこまで話を聞いて何も出来ないじゃあ航海者としての名折れさ」
邑雲は俄然張り切った様子で
「おっしゃ!みんな!さっさと支度するぞ!」
船員達に手際よく役目を与え、自分も船体の様子を見ようと船に向かっていた
楓伐がそれを見て言葉を漏らす
「私は邑雲の事がよく分かりません。優秀ではあるにしろ感情に流されやすく無鉄砲だ。すぐに命を落とすのでは・・・と」
分からない・・・か
船長という立場からすれば
信頼する者のその言葉は重かった
煙草に火を点け一服をおく
「そうだな。そうかもしれない。でも、楓伐。お前は知らない話になるけど、昔ある海賊に襲われた事があってね。無論、敵の戦力がこちらを上回っていたが・・・
その時、邑雲は皆に指示を出し励まし続け、前に出て戦っていたよ。その甲斐もあったのか、その海賊を打ち倒すことも出来た。私はその事、あいつが自分の船に乗っている事を誇りに思う。自分の船には勿体無い。優れ、強く、そして熱い心を持った船乗りだと」
「もちろん楓伐。お前だってそうさ。いつも冷静で、船をしっかりと守ってくれている。琥鉄も含め、私は素晴らしい副官に恵まれて幸せだと思う」
楓伐は静かにゆっくりと息を吐き
「船長がそこまで仰るならそうなのでしょう。ですが、私は彼を私なりに見極めますよ」
そう言い放つと楓伐も船に向かって歩きだした
性格が合わないのは重々承知だが
「どうも、船長というのも大変だな・・・」
そう口から漏らし 船に向かった
その後、バイーアの船乗りから予想以上に細かな情報を得る事ができ
南米北東岸の上陸地点にて「思い出の花」アマリリスを発見することができた
彼女と彼女の祖母がこの花を手に取り
この花に勝らんとする明るい笑顔を見ることができるのなら
この航海の危険などとるに容易いものだろうと思う
邑雲「全部とって帰ろうぜ!その方がジセルちゃんも喜ぶって!」
楓伐「駄目ですよ!そんな事をしては生態に影響が出るかもしれません!」
「ふう・・・」
摘み取る花の数ほど気苦労は増えるばかりか・・・・
コメント